平成20年11月 人と精霊と
この子とよく似た子供達を僕は何人か知っている・・・・
・・・・・回想・・・・・
・・・その子は極普通の高校生に見えた・・・だが
彼女が話し出した内容は、隣に座っておられたご両親の腰を抜かせ卒倒させるに十分だった。
彼女は生まれてからそれまでの自分の見てきたことや経験の多くを両親にすら話したことが無かったからである。
精霊の世界、見えないけれどすぐ隣の世界・・・・・・・・
いつも亡霊を付けてくる同級生・・・大好きな先生の上の仏様を眺めていると時を忘れること・・・
熊本の町の真ん中で魔物に追いかけられ神社に逃げ込んだり・・・桜の花にはいつも精霊が見えること・・・
根っ子に死体が埋まっている木・・・眠るといつも寄ってきていろいろと助言してくれる黒い影・・・
かって自分は邪竜で悪霊に騙され子供を奪われたこと・・・自分の身体の一部(鱗など)をすり潰して丸薬を作って生計を立てていたこと・・・
死んでからは、子供の部屋にある人形に入り、その目からずっと我が子を見守っていたこと・・・
行いが報われて、人間に生まれてきたこと・・・・等々。15歳の少女はなんのてらいも無く落ち着いて静かに話していた・・・・・』
ご祈祷後彼女は落ち着きを取り戻し、学園に復帰したが、結局僕はその子を救えたのかどうか分からなかった。
・・・・・そして今、
精霊界に身体半分を残したまま生活している子が目の前にいる。まだ中学生。
あれから僕は約2年精霊界を見守り瞑想し続けてきた。今度は失敗しないようにと勇んで祈りに身を投ず・・・
見えるものは魑魅魍魎(チミモウリョウ)の類ばかり。さほど危険ではないが、かといってこんな奇怪な世界にこの子を残して
帰るわけにはいかない。・・・手探りで彼の魂を探し続けた・・・・そのとき、スーッと目の前に、風の様にその子が現れた。
端正な顔立、白い肌、つぶらな瞳・・・・・その瞬間 身体中にドンと衝撃が走った!
その瞳に白眼はなく、まるでリスか子犬のように真っ黒だった。 精霊の眼!?
少し前に参拝されたご婦人の祈祷の折、ご自宅の隣に建つという神社の神の姿を垣間見たことがあった。
「お化けのQ太郎」のようなのっぺらぼうの顔。ミント色に輝く身体。手も足も無くこの可愛らしい目だけ。
確かそこの神社の名前が「生目神社」。
「狐憑き」とか「怨霊」などのいわゆる『霊障』ではなく、極自然な魂のニュートラル状態、魂自体が未だ精霊界から独立しておらず、
混沌とした未分化の状態であるのかもしれない。
魔的な暗黒に引き込まれないように常に見守っていかねばならない。
平成20年9月?日 拒食症の女性
電話とメールで遠距離のご祈祷依頼だが、本堂の中に座って居られるときとなんら変わりない。
ご祈祷に時間も場所も関係ない。
体重が35キロまで落ちて苦しんでおられるという。妹さんからも、子供に影響があるから家に来ないでと言われるほど・・・。
おそらく霊媒体質であり、無意識に多くの人の魂をつなぎ留めてしまうのだ。
先日行った美容室の店員の魂を憑けていたりするので、こちらとしても戸惑ってしまうことが多かった。
1度目の祈祷、裸の中年男がみえた。非常に高慢で自己中心的なセックスの亡者だと感じた。尋ねてみたが誰だか分からない。
似た人といえば、ときおり会社に来る他社の営業関係の人くらいだが、ただ心配して声を掛けてくれているだけだという・・・
単なる知人がこんな風に人に憑くということはありえない・・・・・誰か分からないまま祈りを続けていく・・・。
しかしそれはとんでもないことから発覚した。 ある日 例の営業マンの奥さんが怒り狂って電話してきた。
このご主人 相当に好色家らしいが、自分の浮気がばれたとき、どういうわけかその相手を彼女だと言ったのだった。
大騒動となったが、彼の暗い欲望は取り除かれた。
もう1人男性が見えた。こちらは恋人だ。堂々とした顔立ち。
長い交際なのだが、彼は何故かそのすべてを隠し、誰に知られることは無かった。彼女の心の最大のストレスとなっている。
そのため当初は 彼と中年男性の区別が付かず同一人物と考えていた。だから、別れを薦めていたのである。
彼女も僕の助言に従い逢わないことを決意した。
3度目のご祈祷の後、思わぬ電話が掛かってきた。彼が突然尋ねてきて、泣きながら謝り、結婚を申し込まれたということだった。
平成20年12月19日 拒食症の女性・・・
・・・その後も体重はなかなか戻らなかった。
また心の中に結婚に対する微妙な不安感があることなど打ち明けられた。
お参りに入ると、60代の男性・・・別れたお父さんらしい・・・娘に念が残っており生霊状態・・・
・・・なんとこの1日後に再会を果たされ、互いの長い年月の閉じ込められた念を解き放ち和解することが出来たと聞いた。
そして・・・女性(?)の声で 『 どんなに大変でも女性二人 デュエットでコーラスを頑張りましょう!』 と聞こえた。
彼女の姉妹の水子か !? 彼女のコートと黒い大きな鍔の帽子、見開いた目・・・彼女自身とも水子とも判別できない哀れな姿だ・・・
その原因となる映像が映し出される。
ご両親の離婚。別れの場面。お母さんがこの水子を抱きしめたまま途方に暮れて立ち尽くされている・・・・・
その後何度も供養されてはいるらしいが、お母さん自身がこの子を手放す気になれなかったのだろう。
お参りも後半、かなり異様な人物が語りかけてきた。新興宗教の教祖っぽい長い髪、十二単のような衣を着ていたように見えた。
『立派なものですねぇ〜!!』
聞くところによると、数日前に亡くなった教祖様だという。
・・・年が明けて
結婚へ順調に滑り出したこと。体重も増え始めたことなど伺った。
ちなみにこの教祖様 相当に魂が腐っていたらしく、魔界の人となっているようだった。
平成21年1月20日 路上の魂
家を買いたいから「方除(ほうよけ)」をということだったので、お参りを始めた。
一瞬にして霊が見えた。まだ若い、20歳くらいの青年で、仰向きに道路に張り付いている・・・・アスファルトに自縛しておられる。
ご祈祷を中断して訳を聞く。交通事故で亡くなっておられた・・・。
半年が経つと言うのにまだ亡くなった時のまま・・・ 家のことはそっちのけで、この子を助けることに集中する。
・・・・30分程たったろうか、目の前に座って信じられないくらいの笑顔で現れてくれた。
ホッと安心したのか、リラックスしてご祈祷に心を投げ出してお参りを続けた。
そして祈りも終わろうかという時、いきなり再び霊界に引き戻された・・・
なんとその青年が深い水の中を真っ逆さまに落ちていっている!どうしたんだろう! ・・・・声が聞こえる。
「お母さん、慰謝料をたくさん請求することなどもうやめてくれ!僕が死んだのはそのトラックの所為じゃない!・・・・」
振り向くとその女性に尋ねた。今慰謝料の裁判とかされているのですか?
慰謝料で争うことを息子さんは嫌がっておられますよ。成仏しにくいらしいんですよ、、、と。
事故の あるいは死の原因は、この現実の世界とは違った、もっと深い因縁・・・法界の彼方にあります。
慰謝料の請求はこの世では遺族として正当な事かもしれませんが、「法界」と照らし合わせるとき、必ずしも理趣にかなっていないことが
あります。むしろ恨みや悲しみを乗り越えて、事故の真の原因を知り、亡くなった人の真実の心をおもんぱかることが大切だと思います。
魂が一刻も早く平安を得られるように・・・・円満な早期の解決を望むべきです。
それは取りも直さず私たちの魂の勉強にもなることなのです。
平成21年2月23日 路上の魂
・・・・二度目のご祈祷。
黒いソフト帽に黒いスーツで青年は現れ、心が安定していることを示した。
だがまだいくつか心残りがあるらしい。黒い車。戒名らしきものが書かれた紙の位牌が二つ。そして恐ろしい顔で睨みつける青年の顔・・・
車は彼にぶつかったものらしい。
紙の位牌は母親の友達が息子さんのためだからと言って祭らせたもので、そこには全く別の戒名が書かれていた。
早々に持ってきてもらい処分した。
最後の睨みつける青年は、道路端で言い争いになり彼を突き飛ばした友達だった・・・その後自殺してしまっていた・・・・。
彼のために祈った。祈りは届くだろうか・・・安らかなれ・・・。
お経が終わる頃に、穏やかさを取り戻した青年が見えた。ワイシャツ姿だろうか、大人びた顔立ちのイケメンであった・・・
彼は何故あのように鬼のように吊りあがった眼で辺りを睨みつけ恨みを残したまま自殺しなければいけなかったのか・・・
平成21年6月 黒稲荷
夫の不可解な言動が治まるようにと若い女性がみえられた。
・・・暴力的な行為の他、彼女に浮気をしてみるように迫ったり・・・
性的な劣等感が原因だと分かったが、祈祷をしても平穏な日々は長く続かなかった。
数度目のご祈祷の折、チンピラ狐が現れた。しかしいつもは真っ白なのだが、こいつは真っ黒である。
黒いボディースーツのパントマイムのパフォーマンスそっくり、と言えばお分かり頂けるだろうか。
つまり、真っ黒で目だけ白いかなり尖った顔と耳を除けば、あまり人間と変わらない。
股間を押さえ、指差しケラケラ笑い顔で跳ね回っている。
正体が分かれば対処もしやすくなる。やがて平和な日々が来るだろう。
それにしても、こんな馬鹿げた物の怪をどこで拾ったか知らないが、ここまで育て上げたのは己の責任である。
自分の心の在りようには常に注意を払わなければならない。
偉そうに言っているけれどつい1週間前、僕も急に何も見えなくなり、3日ほど御祈祷を止めたのだった・・・(;
平成21年5月 金剛乗寺の総代さん
先日本堂でご祈祷をしていると、庫裏の玄関の来客を知らせる鐘の音が聞こえた。
見ると細身の長身、少し肩を屈めた姿はこの寺の総代を勤めておられる方である。玄関を登っておられる。
もちろん霊である。お元気だとばかり思っていたが、死期が近いと感じた。
信仰深いお家柄で、私の祖父の時代に大師信仰に入られ、当寺の檀家になられていた。
数週間後、その方が入院されていると息子さんから聞いた。
ある日瞑想していると、戦闘機のコクピット・操縦管を握る人が見えた。直下には軍港を出たばかりの陣形を組んで進む
軍艦が見える。まさに出撃の瞬間である。
何のことかと思っていたが、ふと思い出した事があった。あの総代さんのお兄さんが戦闘機乗りで戦死されていたのだった。
・・・いよいよ迎えに来られたんだろうと感じた。その日の午後死を知らせる電話が入った。
心を込めたお葬式も済み、いつものように御祈祷をしていると、今度は本堂の内陣に総代さんの姿・・・
仏様の間直まで進み、菓子とお布施を備えられているのが見えた。御礼に来られたのか・・・
そう思うと目頭が熱くなった。
もうひとかた、亡き父の青年団長同士の友達で、その誼(よしみ)から当寺の檀家となられ、お世話役をされていた方がおられる。
父は早くに遷化したが、こちらはお元気である。だが、老衰に伴い無常の想いが強いのか・・・時々お魂を見かける。
先日は枕元に立ち、早く戒名を付けてくれと、白木の位牌を渡された。ご長男さんが僕の同級生でもあり、この事は告げておいた。
・・・退屈されているのかもしれない、生きる事に。
ときおり散歩されているお姿をお見かけする、お魂ではなく。